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仙台高等裁判所 昭和25年(う)506号 判決

被告人

佐瀬長作

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

弁護人岸達也の控訴趣意第三点について。

しかし原審公判調書によれば、所論渋谷今朝夫外二百余名の歎願書(同業者二十六名の歎願書は原審に提出された形跡なく記録にも編綴されていない)は被告人の情状に関する証拠として参考までに提出されたことが明らかであつて正式の証拠調の請求ではないのみならず、かかる書面は必ず証拠調をしなければならないとする訴訟法上の根拠もないからこれを一覧の上記録に編綴した原審の措置を目して、手続法令に違背するとの所論は採用することができない。

(弁護人岸達也の控訴趣意第三点)

原判決には同上判決に影響を及ぼすべき違法がある。

原審公判調書を閲するに、弁護人は渋谷今朝夫外二百余名の署名捺印ある歎願書を情状のため提出したとあり、しかるに該歎願書については当時検察官も証拠能力につき同意した陳述をなしたるも調書の上においてその記載なく単に裁判官のみ一覧した上記録に編綴する旨記載あるのみ、公判期日における訴訟手続については公判調書に記載されたものは公判調書のみによつて証明することができるとあるが故にいまさら如何ともすること能わざるもこの外被告人と同業者二十六名の署名捺印ある歎願書も提出したるにこれについては記録に編綴しあるのみで何等取調をなさないのである。由来歎願書は請願の一種とみなされ旧法時代においては雑書類に編綴されあまりかえりみらざれる時代ありしも新法のもとにおいてはいやしくも署名捺印ある、私文書で刑事訴訟法第三百二十三條第三号に当り、前者については同法第三百二十六條にいわゆる同意した書面であるに不拘、敍上の如く適法なる公判手続を執らせ単に記録に編綴されたるのみ、これ畢竟後述の如く情状判断を誤りたる一因で判決に影響を及ぼすべき公判手続上の欠点で違法である。

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